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古物営業法の実務ガイド

中古品(古物)の売買を「業として」行うには、古物営業法に基づく古物商許可と営業上の義務の遵守が必須となる。 本ページは許可申請から本人確認・台帳記録・各種届出まで、買取現場の実務フローに落として整理する。 2018年(平成30年)改正で許可単位・営業場所のルールが大きく変わっており、旧知識のままの運用は危険。 規制の位置づけや他法令との重畳適用は法規制セクションのガイドのマトリクスを先に確認されたい。

位置づけ

本ページは社内理解用の整理であり、法的助言ではない。個別案件の判断は管轄警察署・顧問弁護士に確認すること。

概要

  • 法の目的: 盗品等の売買の防止と盗品等の速やかな発見(法第1条)。義務の大半は防犯目的から設計されている。
  • 「古物」の定義: 一度使用された物品、使用のために取引された未使用品、これらに幾分の手入れをした物(法第2条第1項)。施行規則第2条で美術品類・衣類・時計宝飾品類・自動車・書籍・金券類など13品目に区分。用語の詳細は用語集も参照。
  • 許可権者: 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(法第3条)。2020年4月1日以降、全国で1つの許可に一本化。
  • 申請窓口: 主たる営業所を管轄する警察署の生活安全課。手数料は19,000円(不許可・取下げでも返還されない)、標準処理期間は約40日(土日除く)1
  • 欠格事由(法第4条): 破産未復権者、拘禁刑以上の刑に処せられた者(刑の執行終了・不執行から5年未経過。2025年6月1日施行の刑法等改正により「禁錮以上」から改称)、窃盗・背任・遺失物等横領・盗品有償譲受け等の罪で罰金刑を受けた者(5年未経過)、暴力団員等が含まれる。

2018年改正(平成30年法律第21号)の主なポイント

① 許可単位の見直し(都道府県ごと→主たる営業所所在地の公安委員会の許可に一本化。2020年4月1日全面施行) ② 営業制限の見直し(事前届出により仮設店舗での買受けが可能に) ③ 簡易取消し制度の新設 ④ 欠格事由の追加(暴力団排除等) ⑤ 非対面取引の本人確認方法の追加

実務フロー図

実務フロー図

テキスト版(Mermaid・編集用)

許可申請フロー

flowchart LR
    A["欠格事由の確認(法第4条)"] --> B["添付書類の準備(略歴書・住民票・誓約書等)"]
    B --> C["主たる営業所の管轄警察署へ申請(手数料19,000円)"]
    C --> D["審査 約40日"]
    D --> E["許可証交付"]
    E --> F["標識掲示・台帳整備・営業開始"]

買取時の本人確認フロー

flowchart TD
    A["買取申込受付"] --> B{"対面 / 非対面"}
    B -- "対面" --> C["住所・氏名・職業・年齢を申告受領\n身分証明書で確認"]
    B -- "非対面" --> D["施行規則第15条第3項の方法を選択\n(eKYC / 本人限定受取郵便 等)"]
    C --> E{"対価1万円未満かつ\n例外品目でないか"}
    D --> E
    E -- "1万円未満+通常品目" --> F["確認省略可"]
    E -- "それ以外(例外品目含む)" --> G["確認実施・台帳記録"]
    G --> H["帳簿備付け(最終記載日から3年保存)"]

義務の詳細

義務 根拠条文 実務ポイント
許可取得 法第3条 無許可営業は刑事罰(後述)
URL届出 法第5条第1項第6号 自社サイト等で取引する場合は送信元識別符号(URL)を届出。開設・変更時に漏れなく届出
許可証等の携帯 法第11条 行商時は許可証(従業者には行商従業者証)を携帯
標識の掲示 法第12条 営業所ごとに見やすい場所へ
営業場所の制限 法第14条 買受けは営業所・相手方の住所等・届出済み仮設店舗のみ
相手方の確認(本人確認) 法第15条第1項 対面・非対面それぞれ方法が法定
不正品の申告 法第15条第3項 不正品の疑いがあれば直ちに警察官へ申告
帳簿(古物台帳)への記録 法第16条 買受け等の都度記録(規則で記録を要しない場合あり)
帳簿の備付け・保存 法第18条 最終記載日から3年間

本人確認の方法(法第15条)

相手方から住所・氏名・職業・年齢の申出を受け、運転免許証等の身分証明書の提示等で確認する。

施行規則第15条第3項に列挙された方法から選択。主な方法は次のとおり。

  • マイナンバーカードの電子証明書を用いた電子署名(JPKI)
  • 本人限定受取郵便の送付・到達確認、本人限定受取郵便による代金送付
  • 住民票の写し・本人確認書類の送付+簡易書留の転送なし送付+本人名義口座への振込等の組合せ
  • eKYC:容貌の画像+本人確認書類の画像またはICチップ情報の送信
  • 過去に確認済みの相手のID・パスワードによる再確認

犯収法改正の波及(施行日は予定・未確定)

犯収法施行規則の改正(改正準備中・施行日は予定・未確定)で画像送信eKYCが原則廃止予定になることに伴い、古物営業法側の非対面確認方法も見直しが検討されている。公布状況はJAFIC公式ページで要確認。規制改正ウォッチも参照。

対価総額1万円未満の取引は原則確認不要。ただし次の品目は1万円未満でも確認必須法第15条第2項規則第16条)。

例外品目 備考
ゲームソフト
CD・DVD等(磁気・光学記録媒体)
書籍
自動二輪車・原動機付自転車(部品含む)

→ これらの品目は1万円未満でも本人確認の省略が認められない(規則第16条)。書籍・メディア・ゲームの買取は事実上全件確認が必要。

古物台帳の記録事項(法第16条・第18条)

記録事項 補足
取引の年月日 受領・引渡しの別とともに
古物の品目・数量
古物の特徴 型番・製造番号・傷等、個体識別できる程度に
相手方の住所・氏名・職業・年齢
確認措置の区分 法第15条第1項のどの方法で確認したか

帳簿(電磁的記録も可)は最終記載日から3年間営業所に備え付ける。

行商・仮設店舗・URL届出

  • 「行商する」旨の許可であれば、相手方の住所・居所での出張買取が可能(法第14条)。行商時は許可証を携帯。出張買取には特商法の訪問購入規制も重畳適用される(訪問購入規制の実務)。
  • 催事等の仮設店舗で買い受ける場合は、あらかじめ日時・場所を管轄公安委員会へ届出(2018年改正で追加)。
  • ホームページ等で取引する場合のURL届出は、開設・変更時の届出漏れが典型的な指摘事項。

罰則・行政処分

違反行為 罰則・処分 根拠
無許可営業・名義貸し・営業停止命令違反等 3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 法第31条
確認義務違反・帳簿不記載・虚偽記載等 6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金 法第33条
法令・処分違反全般 指示(法第23条)、6月以内の営業停止・許可取消し(法第24条) 法第23条・第24条

許可取消しの効果

許可取消しを受けると法第4条の欠格事由に該当し、取消しから5年間は再申請できない。

実務のポイント

許可申請チェックリスト

  • 申請者・役員全員の欠格事由非該当を確認
  • 主たる営業所の管轄警察署を特定
  • 添付書類(略歴書・住民票〔本籍記載〕・誓約書・身分証明書)を申請日から3か月以内に取得
  • 法人は定款・登記事項証明書も準備
  • 取り扱う品目の13品目区分を決定
  • 行商・ネット取引を行う場合はその旨を申請書に明記
  • 手数料19,000円の準備(現金・証紙は管轄署で確認)

開業後の継続義務チェックリスト&違反パターン

  • 標識を営業所の見やすい場所に掲示
  • 買取時の本人確認フローを全スタッフへ周知(例外品目:書籍・CD・ゲーム・二輪は1万円未満でも必須)
  • 台帳(電磁的記録可)を買取都度更新し、3年間保存。個体識別情報(型番・製造番号等)の記載が薄いと後日照会に対応できない
  • URL届出漏れ・変更届の管理(EC出店・移転のたびに確認。ECモール新規出店時の失念が典型事例)
  • 仮設店舗・催事参加時の事前届出を忘れない
  • フリマアプリ・オークション等での転売が「業として」の要件を満たしていないかを定期チェック

よくある質問

フリマアプリで不用品を売る個人は許可が必要か?

自己の生活用品を処分する目的で出品する場合は「業として」の要件を満たさず、許可は不要。ただし、仕入れ目的で購入した物を転売する・反復継続して利益を得ている・大量出品しているといった場合は「業として」の判断がなされる可能性がある。グレーゾーンと感じたら管轄警察署の生活安全課に相談する。

複数の都府県に店舗を持つ場合、許可は何枚必要か?

2020年4月1日以降は主たる営業所の所在地の公安委員会の許可1枚で全国で営業できる(2018年改正の効果)。ただし、営業所ごとの管理者の設置や届出等の義務は残るため、各都道府県の管轄署への届出手続きは行う必要がある。

ネットオークションで落札した中古品を転売する場合も許可が必要か?

「業として」行う場合は必要。個人の転売であっても、営利目的で反復継続すれば許可が必要と判断される。また、自社サイト・モール・SNS等でのURL届出も必要になる。

台帳の電磁的記録は何を満たせばよいか?

法第18条の2の要件(改ざん防止措置等)を満たした電磁的記録が認められる。POSシステムや専用ソフトを使う場合は保存期間(3年)の管理設定を確認すること。

買取した品物が後日盗品と判明した場合はどうなるか?

警察から照会・引渡し請求が来た場合には協力する義務がある。本人確認・台帳記録が適切に行われていれば善意取得の議論が生じるが、確認義務を怠っていた場合は行政処分の対象にもなりうる。速やかに管轄署の生活安全課に相談する。

改正動向

  • 犯収法改正の波及(改正準備中・施行日は予定・未確定): 非対面の本人確認でeKYC(画像送信方式)が原則廃止予定となり、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)への一本化が進む見込み。施行日・公布状況はJAFIC公式ページで要確認。古物営業法施行規則の非対面確認方法も追随改正が予想されるため、宅配買取・Web買取のフロー設計には早期から注意が必要。
  • 運用・解釈の変更: 警察庁は解釈基準通達を随時更新している(警察庁通達PDF・令和6年版)。様式変更は都道府県警の窓口運用に直結するため、年1回以上の確認を推奨。
  • 詳細は規制改正ウォッチを参照。

出典・参考リンク


  1. 警視庁: 古物商許可の申請・許可制度の解説を参照。都道府県によって標準処理期間が若干異なる場合がある。